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2016年10月18日火曜日
近代以前の忌日俳句について
芭蕉忌や遅れ生まれし二百年 野村喜舟
編集長の林誠司です。
うまい句だな~、と感心する。
野村喜舟は「渋柿」二代目主宰。
久保田万太郎に匹敵する俳句の天才だと思う。
ところで先日、10月12日は松尾芭蕉忌だった。
ところが、これは旧暦である。
芭蕉は旧暦の10月12日、大阪御堂筋で亡くなった。
今の暦(新暦)では、11月末にあたる。
どちらで詠めばいいのだろう?
だいたい10月中旬と11月末では「陽気」が、「季節」が違う。
10月中旬は爽やかな秋だし、11月末は木枯しの吹く冬である。
芭蕉忌は「時雨忌」ともいう。
時雨は冬の季語だから、やはり「冬」に詠むのがいいのだろう。
芭蕉の絶句、
旅に病で夢は枯野をかけ廻る
(たびにやんで ゆめはかれのを かけめぐる)
などを思うと、やはり冬がいい。
ただ、「旧暦」は、新暦に合わせると、毎年、日が違ってくる。
これが困る。
去年は11月29日だったが、今年は28日になったりする。
それゆえ、11月末あたりになると、その日が忌日であるかはよくわからず、
今時分が芭蕉忌だろうな~。
と考え、作っている人がほとんどではないか。
そういうもろもろがあって、今では忌日を新暦のまま作る人も多い。
例えば
西行忌(旧暦2月16日)
実朝忌(旧暦1月17日)
蕪村忌(旧暦12月25日)
一茶忌(旧暦11月19日)
など、よく俳句に詠まれるが、これらも旧暦である。
西行忌などは(新暦)2月16日は春ではあるが、ものすごく寒い時期である。
ねがはくは花のしたにて春死なむ その如月の望月の頃
と詠み、その宣言(?)通り、満開の桜と満月の翌日に旅だった西行を考えると、やはり「桜」の頃に詠みたい…という気持もある。
そういうわけで実にややこしい。
旧暦、新暦どちらで詠んだほうがいいのかと聞かれたら、正直。
どっちでもいい。
と答えるしかない。
忌日俳句といえば、近現代俳句では森澄雄の句がとくにすぐれている。
ある雑誌の対談で、忌日俳句について森さんは「昔の人の忌日俳句は深刻にならなくていいから…(笑)」と発言されていたのが印象的だった。
そういう感じでいいのだと思う。
扇もて西日さへぎる業平忌 澄雄
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