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2016年3月1日火曜日

今日から3月。

























いきいきと三月生る雲の奥      飯田龍太


(いきいきと さんがつうまる くものおく)


今日から3月である。
3月になると、やはり、この句を口ずさむ。

が…朝、家を出ると結構な風が吹いていて、あまりに寒く涙目になった。
とても、こんな句の気分ではないな~、と思ったのだが、龍太の住んでいたところは山梨県の笛吹川であることを思い出した。
笛吹川はほとんど甲府と考えていい。
それよりも山に近いところにあり、四方を山に囲まれた盆地である。
私の住んでいる温暖な神奈川県横須賀と比べたら、なおなお寒いだろう。

この句は一見、あたたかな日の中、高々とした甲斐の山々を超えてくるのどかな雲をながめながら、

あ~、やっと春が、三月がやって来たんだな~。

と喜んでいる作者の姿を思い浮かべていた。
が…、ふと考えると、まだまだ甲斐の地は寒かろう。
この句は、そういうのどやかな句ではなく、山から吹き降ろす風に身を引き締め、険しい山を越えてくる雲の姿をながめながらも、着実にやってくる「春」の力強さ、四季の運行の力強さを見ていたのではないか、と思った。

この句は決してのどかな句ではない。
甲斐の厳しく高貴な風土の中、すっくと寒風の中に立つ龍太の超然とした姿を思い浮かべたほうがいいのではないか。
そういうことを考えた。

今日から4月号の入稿作業が始まる。
忙しい…わけだが、私は午後から俳人協会総会、懇親会に出て、そのあと、依田善朗さんの俳人協会評論賞を祝う会、村上鞆彦君の俳人協会新人賞を祝う会に出る。
「直帰」である。
まことに編集部のスタッフには申し訳ない。

依田さんの会では「乾杯」を、村上君の会では「中締め」を頼まれている。
結構忙しい。

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